ODRの倫理規程-ICODRスタンダード(日本語版)
ICODRはアメリカで設立された非営利の国際コンソーシアムですが、これまで長くODRの研究や実務に従事してきたメンバーが設立しており、ODRに関するスタンダードとしてICODR Standardsを公表しています。
近年、ODRが新時代の紛争解決方法として急速に注目を集めるようになったことを受けて、質の高いODRとはなにか、ODRにおける倫理的な規程はどうあるべきかなど、新たな指針を策定する必要性が高まったことから、NCTDRにおける議論を土台に作られたものです。
今後ODRの社会実装を進める段階では、各運営主体において倫理規程を含む、運営に関する基準などの検討が必要になると考えますが、その際に各団体が参照することができる、統一的なODRの理念や規程のあり方について、日本でも議論していくことが不可欠です。
当協会でも、海外の議論状況を注視しながら、日本国内における議論を促進できるよう活動をしてまいります。
以下では、ICODRの許諾を得て、ICODRスタンダードを日本語に翻訳をしたものを紹介いたします。
アクセシビリティ(Accessible)
ODR は、当事者にとって見つけやすく、参加しやすく、代理権を制限しないものでなければならない。モバイルとデスクトップの両方のチャネルで利用可能であり、利用する人のコストを最小限に抑え、様々な身体能力レベルの人々が容易にアクセスできるものでなければならない。
説明責任(Accountable)
ODR システムは、そのサービスを提供する機関、法的枠組み、およびコミュニティに対して継続的に説明責任を果たす必要がある。
専門性(Competent)
ODR のサービス提供者は、対象地域において有能で効果的なサービスを提供するために必要な紛争解決、法律、技術的実行、言語、文化に関する専門知識を有していなければならない。また、そのサービスは時宜にかなったもので、当事者の時間を効率的に使用しなければならない。
機密保持(Confidential)
ODRは、当事者のコミュニケーションの機密を保持しなければならないが、(a)誰がどのようなデータを見るか、(b)そのデータがどのように利用されるか、といった点については公開されなければならない。
平等性(Equal)
ODRは、すべての当事者を尊重し、尊厳をもって扱わなければならない。ODRは、しばしば黙殺されたり疎外されたりする人の声をも聞くことができるようにし、オフラインでの特権や不利益が ODR のプロセスで再現されないようにする必要がある。
中立性(Fair/Impartial/Neutral)
ODRは、デュープロセスの観点から、すべての当事者を平等に、個人、グループ、または団体に対する偏見や利益なく扱わなければならない。プロバイダー、当事者、およびシステム管理者の利益相反は、ODR サービスの開始前に開示されなければならない。
適法性(Legal)
ODR は、関連するすべての国・地域の法律を遵守し、維持しなければならない。
安全性(Secure)
ODRの運営主体は、収集したデータおよびODRのプロセスに関与した人同士のコミュニケーションが権限のない者と共有されないことを保証しなければならない。違反があった場合には、利用者に速やかに通知しなければならない。
透明性(Transparent)
ODRの運営主体は、a) 紛争解決プロセスの執行力およびその結果、および b) 利用に関するメリットとデメリットを事前に明示的に開示しなければならない。ODRにおけるデータは、誤った表現や文脈を無視した表現がなされないように、収集、管理、提示されなければならない。
(文責:渡邊真由)