JODR (Japan Association for Online Dispute Resolution)

日本ODR協会

Japan Association for Online Dispute Resolution (JODR)

【2022年改訂版】ICODRスタンダード

     

Online Dispute Resolution Standards (ODR Standards)

ODRスタンダード(日本語版)

このODRスタンダードは、ICODR(International Council for Online Dispute Resolution)とNCTDR(National Center for Technology and Dispute Resolution)により作成されたものである。以下に示されるODRスタンダードは、ODRに関わる実務家及び紛争解決手続を行う際に利用されるODRプラットフォーム、システム、ツールに適用されるものである。これらは相互に依存するものであり、すべてが一体的に適用されなければならない。ODRスタンダードは、ODRに関するソフトウェアやシステム開発を行う事業者にとって有益なものであり、倫理的なオンライン紛争解決システムの要件を一般に知らせる役割を果たす。本スタンダードでいう「ODR」には、ODRに関連したサービスのホスティング、実装及び提供に関与する人、事業者及び技術を含む。

ODRプラットフォームとその手続において遵守されるべき基準は以下の通りである。

1. アクセシビリティ(Accessible

ODR は当事者がシステムの中で見つけやすく、参加しやすいものでなければならない。当事者が代理を受ける権利を制限するものであってはならない。また、すべての当事者がアクセスできるコミュニケーション・チャネルで利用ができること、利用者の負担するコストが最小限に抑えられていること、異なる身体的特徴を持つ人々が容易にアクセスできるようにすることが必要である。

2. 説明責任Accountable

ODR システムは、そのサービスを提供する機関、法的枠組み、およびコミュニティに対して継続的に説明責任を果たさなければならない。ODRプラットフォームは監査が可能でなければならず、その結果を利用者が参照できるようにしなければならない。具体的には、以下について人間による監査がなされなければならない。i) 文書(原本)のトレーサビリティ及び人工知能が採用された場合の結果に至るまでの追跡可能性、ii) 人間及び人工知能による意思決定のあり方、iii) 結果及び iv) 当事者が結果を利用できるようにするためのプロセス。

3. 専門性Competent

ODRプロバイダーは、対象地域において有能かつ効率的なサービスを提供するのに必要となる、紛争解決、法律、技術力、言語及び文化等に関する専門知識を有していなければならない。ODRに関するサービスはタイムリーに提供されなければならず、利用者の時間を効率的に使うものでなければならない。

4. 機密保持Confidential

ODRプロバイダーは、当事者のコミュニケーションの機密性を保持するために、誠実かつ適切な努力を継続してしなければならない。具体的には、i)誰が、どのようにしてデータを見るか、ii)そのデータをどのように、どのような目的で使用するか、iii)どのようにデータが保存されるか、iv)データが破棄または修正される場合の方法及び時期、v)違反があった場合にそれに関する情報がどのようにして開示されるか、また、再発防止のためにどのような措置が講じられるか。

5. 平等性(Equal

ODRプロバイダーは、すべての参加者を尊重し、尊厳をもって扱わなければならない。しばしば黙殺されたり疎外されたりする人の声を聞くことができるように配慮し、オフラインでの特権や不利益が ODR のプロセスで再現されないように配慮されなければならない。ODRでは、サービスの利用方法、セキュリティ、機密性、データ管理に関するアクセスをすべての当事者に対し開かなければならない。ODR の利用により、いかなる当事者にも技術的または情報的な優位性を与えることのないよう継続的な努力をしなければならない。バイアスは、すべてのプロセス、コンテクスト及び当事者の特性について積極的に回避されなければならない。ODR に関するシステム設計をするにあたっては、人工知能による意思決定機能がプロセスや結果にバイアスを生じさせたり、複製したり、複合化したりすることを防ぐための積極的な取り組みが含まれなければならない。ODR システムの設計及びバイアス等に関する監査をするにあたっては、透明性確保の観点から、その監査結果を ODR プロバイダーや利用者に対し情報を開示すべきである。

6. 公正性及び中立性Fair and Impartial

ODRではすべての当事者を公平に扱わなければならず、個人、団体または事業者に対する偏見や優遇を排除しなければならない。ODRを利用するにあたり、ODRプロバイダー、システム管理者、利用者に利益相反がある場合は、サービスの利用に先立ちその情報が開示されなければならない。これに関連した情報開示に関する義務は、ODRプロセス全体を通して継続されなければならない。

7. 適法性Legal

ODR プロバイダーは、当該プロセスが適用される関連法規を遵守及び支持し、それを当事者に開示しなければならない。

8. 安全性Secure

ODR プロバイダーは、ODR プラットフォームが安全であること、また、収集されたデータ及び OD R利用者間のコミュニケーションが無許可に第三者と共有されないことを保証するために、誠実かつ適切な努力を尽くさなければならない。違反があった場合、その違反に関する情報開示と併せて再発防止措置についても提示しなければならない。

9. 透明性(Transparent

ODRプロバイダーは、適時かつアクセス可能な方法で次の事項を通知しなければならない。i) 紛争解決プロセス及び結果と執行力の形式、ii) 利用に伴い生じうるリスク、コスト及びメリット。ODRにおけるデータは誤ったものや文脈を逸脱したものとならないよう、適正な方法で収集、管理、提示がなされなければならない。人工知能による意思決定に影響を与える可能性のあるデータ収集に関する情報源と方法は、すべての当事者に開示されなければならない。ODRにおいて人工知能を使用した場合は、関連法規や規制、そのような規制がない場合は透明性や公正性に関するガイドライン等を遵守しなければならず、それを一般に対し開示しなければならない。ODR はその役割や技術の利用に伴い生じうる制限や選択肢の創出とそれが最終決定に与える影響について情報開示をしなければならない。ODRシステムやプラットフォームの監査においては、システムの性能を評価するための測定基準を策定し、その正確性や精度に関する情報をODRシステムオペレーターや利用者に対し周知すべきである。データ侵害があった場合には、その再発防止措置について、適時かつアクセス可能な方法で利用者に通知がなされなければならない。

IMPLEMENTATION OF ODR STANDARDS

ODRスタンダードの実施)

ICODRは、実務家、プラットフォームおよびシステムデザイナー及びODRに関わるあらゆる人や団体がこのODRスタンダードを採用することを推奨する。民間または公的機関であるかを問わず、紛争解決に関わる団体がこの基準を参照し、異なる技術的デザインの影響や紛争当事者の属性、紛争類型に応じたODRの利用方法の検討を通して、アカウンタビリティの観点から適切なメカニズムをつくることを推奨する。

(翻訳:渡邊真由)

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